今日,人間は地球規模の暴力(ヒュブリス)に見舞われている。アウシュヴィッツやFUKUSHIMAに象徴される暴力は,アフリカ地域の争乱,中近東の荒野や諸都市,福島の森林農地,化学物質による汚染など,至る所でその猛威を振るっている。それらの暴力は,人と人との親愛,文化圏相互の恊働,そして人びとを寸断し,他者性は忘却される。こうした現象は,金融資本主義,大国の政治戦略,技術支配(巨大原子力科学),大衆操作のマスメディア,IT産業などを集約する経済=技術=官僚(エコノ=テクノ=ビュロクラシー)機構の全体主義的支配に支えられ,そこには人間中心主義という傲慢(ヒュブリス)が伏在している。 ヒュブリスとは古来,暴力と傲慢を意味し,古代神話やヘブライ・キリスト教の伝統では人間が「神の如くなる」傲慢不遜と理解され,すでに古代の知恵は現代文明を予見していた。著者はニュッサのグレゴリオスやアウグスティヌス,そしてトマスなどのテキストを通して暴力を突破する恊働の道を探る。 現代の根源悪である人間の虚無的暴力と自己神格化を超克する思想的地平を開くために,著者は生成と他者への自己解放の思想エヒイェロギアを構想し,自同性の解体と新たな恊働態の構築を試みる意欲作である。

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