札幌農学校には明治期末に本格的な学寮が設置される以前から種々の寮が存在した。その中で,宮部金吾先生が1898年の設立時から「舎長」として指導した「青年寄宿舎」は異色の寮であり,900余名を輩出した。本書は,創立以来学生の手で書き継がれてきた60冊あまりの日誌を解読し編集したものである。日誌では,宮部金吾先生の薫陶,先生・先輩たちと舎生の交流,寄宿舎生活の特徴・諸相などが具体的に書かれ,学生たちの人生観,学問論などが論ぜられ,戦時下の厳しい社会情勢の中での死生観が語られている。本書の主要部分である第2・3章は,400字換算で5、000枚に及ぶ膨大で多岐に亘る資料のなかから抜粋され,論題ごとに集められている。各節に編集委員の手でリードと解題が付され,時代背景や他の事柄との関連が分かるように配慮されている。多様な論題から,先生と学生たちが,また学生同士がいかに深い関係で結ばれていたか,学びにも遊びにも多面的に活発だったか,そして日記には自由にしかも内容のある記述を残したか,その一端がうかがえる。学生生活を長期にわたり詳しく正確に,しかもリベラルな人間形成が行われていたことを伝えている。本書は,青年寄宿舎関係者にとってばかりでなく,現代の学生や大学教育関係の人々にとっても得ることの多い内容である。

Price¥8,250

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