
熊野比丘尼による地獄極楽の絵解きで知られる熊野観心十界図。極彩色の迷宮のような画面の奥に目を凝らすと、東アジアの死霊救済儀礼の豊穣な世界へと通じる道筋が見えてくる。その原型となった朝鮮の〈甘露図〉へ、さらにその背後にある中国の〈水陸画〉へ、絵画の来た道を遡りながら読み解く、生と死を巡る東アジア精神史。 口 絵 プロローグ 出逢いの風景 第一章 聖痕としての熊野 一 複製という罠 二 熊野比丘尼の面影 三 記録された熊野比丘尼 四 だれが記憶を語るのか 五 絵解きは再現されるのか 六 地域の神話的世界 第二章 隠された部屋 一 五趣生死輪図からはじまった 二 これは観心十界図ではない 三 これは施餓鬼図である 1 施餓鬼の発見 2 奈河の橋 3 首枷の女 4 ふたたび施餓鬼へ 5 甘露図という衝撃 第三章 悲の器ーー朝鮮甘露図の世界 一 朝鮮甘露図研究のいま 二 甘露図と焰口餓鬼 三 甘露図と水陸画 四 朝鮮社会にて 五 旧龍岸寺本の発見 1 『無遮水陸大斎記』の衝撃 2 旧龍岸寺本の図様をめぐって 六 甘露のしずく 第四章 熊野観心十界図へ 一 中国水陸画から朝鮮甘露図、そして 二 錯綜するモチーフ 三 血と黒髪ーーなぜ血の池地獄に堕ちるのか 四 施餓鬼の斎壇はよみがえる エピローグ 明日の死者として 注 引用・参考文献
- ISBN:
- 9784000226516