
近代日本の性風俗産業は、時代の潮流と共に多様に変化し新しいものが次々と生み出されていった。特に一九二〇年代以降、大衆化する社会のなかで、公娼制度のもとにあった遊廓などの娼妓から私娼である酌婦やカフェーの女給などへと、その産業の担い手たちは大きく変化していく。本書は、戦前の風俗や売買春に関する意識を問いつつ、公娼制度や廃娼運動中心の研究を超えてその構造を明らかにしていき、さらに男性側の心理も考察。それらから現代社会における売買春や性風俗をめぐる「常識」や前提を問い直し、再考していく。 序章 近代日本における私娼・性風俗研究の可能性 第1部 大正期の私娼と〈準公娼制度〉への編入 第1章 大正芸妓の売買春と黙認問題 第2章 東京二大銘酒屋街形成と「私娼撲滅」の挫折 補論1 戦前期の全国芸妓屋同盟会の設立と拡大 第2部 身売り問題と花柳界遊びにみる〈準公娼制度〉の限界 第3章 身売りと都市売買春産業がかかえる問題 第4章 花柳界がうみだす花柳界弱者と廃娼論 補論2 大正期の「恋愛」論における「個」と人格 第3部 「エロ・グロ・ナンセンス」時代の到来 第5章 一九三〇年代のカフェーの性風俗化による「女郎屋ハカイ」 第6章 カフェーにおける性の「大衆」化が示すもの 第7章 ダンスホール閉鎖問題にみる戦時の性風俗・「自由恋愛」のゆくえ 終章 売買春・性風俗を変容させるもの
- ISBN:
- 9784908672613