
[商品について] 日中戦争はなぜ長期化し、太平洋戦争へと突入していったのかーー。戦争という巨大な現象を明らかにすることは容易ではない。 本書は、戦後平和活動を精力的に行った元陸軍中将・遠藤三郎と、アメリカ人ジャーナリストのエドガー・スノウを中心に、残された史料から戦争の実態を明らかにしようとする試みである。 本書は学生向けではあるが、日本が歩んだ戦争の道を俯瞰できる恰好の一書として、一般の方にも読み応えのある作品となっている。 [目次] この講義を聴講する皆さんへ 第九章 日中全面戦争の開幕 盧溝橋事件:ついに泥沼の全面戦争へ突入 (1)日本陸軍の反応:拡大派と不拡大派 (2)蒋介石:ついに戦争を決意 遠藤三郎の華北従軍日誌 (1)華北の戦場:遠藤の従軍体験 (2)日本軍のモラルの崩壊 第十章 日中全面戦争の展開 E.スノウの情報分析:「アジアの戦争」より (1)周恩来夫人:日本軍の封鎖を突破 (2)八路軍:最初の戦果 (3)スノウの日中戦争論:「アジアの戦争」(1941年刊行)より (4)1937年の中国の軍事力 蒋介石:その人と思想 (1)蒋介石:その人と思想 (2)蒋介石:武漢で徹底抗戦を語る 中国工業合作社運動の展開 (1)工業合作社のアイデア (2)日本軍占領地域:壊滅した中国工業 (3)国際的に認知された合作社運動:生産拠点の大移動へ (4)合作社:2000マイルのネットワーク ノモンハン事変と遠藤三郎 (1)草原の日ソ戦争:ノモンハン事変の発生 (2)遠藤三郎の主張:“ソ連と戦うな” スノウ:延安で毛沢東と再会 (1)毛沢東:世界情勢を語る (2)毛沢東:魯迅の「阿Q正伝」とヒトラーを語る 重慶爆撃と遠藤三郎 (1)遠藤三郎:ピンチ・ヒッターとして戦場へ (2)重慶爆撃に出動:蒋介石官邸を爆撃 (3)対米戦争の前哨戦 第十一章 アジア太平洋戦争の開幕 重慶爆撃以後の極東アジア (1)「龍は自らその傷を癒す」 (2)スターリンは中国を売り渡すだろうか? (3)スノウ:日米開戦必然論を展開 遠藤三郎とシンガポール・パレンバン進攻作戦 (1)遠藤三郎:マレー半島を空襲 (2)ペナン島の爆撃:最初の戦果 (3)パレンバン挺身作戦=石油獲得作戦の発動 スノウの反ファッシズム・世界戦争論 (1)スノウの講演:日本が「中国、アメリカと世界戦争」 (2)「ファッシズムと戦うアジア」を展望 第十二章 アジア太平洋戦争の展開 米軍の反抗開始からサイパン島決戦へ (1)アメリカ軍の反撃開始 (2)遠藤の航空戦略案:参謀本部で否決される (3)遠藤:航空兵器総局長官に任命される (4)サイパン島決戦:「これをもって戦争の終幕とせよ」 (5)神風特別攻撃を容認 第十三章 アジア太平洋戦争の終幕 スノウのみたアジア独立運動とソ連の対日参戦 (1)ルーズベルトのアジア独立論 (2)若きネルーと裸の聖人ガンジーの印象 (3)東京への道:連合軍の反撃 (4)大東亜会議の欺瞞を看破 (5)ロシアの対日参戦:世論の形成と参戦時期 遠藤三郎の終戦日記 (1)台湾沖・航空戦果を誤報 (2)レイテ決戦:ついに「神風」の出撃 (3)無条件降伏=国体擁護と不徹底な停戦命令 第十四章 アジアの目覚め:人民の解放 戦艦ミズーリ号上の降伏調印式から天皇の人間宣言へ (1) ミズーリ号上の降伏調印式 (2)マッカーサーの「奴隷解放宣言」 (3)遠藤三郎の「非武装平和宣言」 (4)昭和天皇の人間宣言──-神の座から人間へ 付録資料 戦後の遠藤三郎 ── 元将軍の非武装平和論の展開 国連警察部隊の設置を提唱───── (1)土に生きる:晴耕雨読の毎日 (2)出獄後に模索した:戦後最初の「国防論」 (3)農民としての第一声:非武装平和論の原型 護憲と再軍備反対の論客として────- (1)改憲と再軍備肯定論に対する反駁 (2)東久邇、片山、石橋元首相とともに岸信介首相の退陣を要請 (3)4度日の訪中:とくに中国人民革命軍事博物館の印象 元陸士同期生からの勧告文と遠藤の回答文──── (1)26期会からの勧告文 (2)「二六会幹事諸兄の勧告文に答える」:論旨明快な遠藤の回答 あとがき [出版社からのコメント] 今を生きる私たちの社会の中で、先の戦争の面影を見出すことはほとんどなくなりました。かつては目にした白服を着た傷痍軍人の姿も街から消え、無事に戦争から帰還した人も心の傷を語ることは難しいでしょう。 敗戦によって、戦争の元凶とされた戦前の体制はすべて悪とされ、先の戦争に関する充分な研究がなされないまま、私たちは今の世を生きています。 戦争という巨大な殺人装置がなぜ動き出し、暴走していったのか、戦争終結から時間が流れた今だからこそ、私たちは冷静に考えることができる筈です。 私たちが、それぞれ先の戦争についての意見を持つための一助として、本書を活用していただければ、これに勝る喜びはありません。 【著者プロフィール】 吉田曠二(よしだ・ひろじ) 1937年 京都市伏見区生まれ 1960年 同志社大学法学部政治学科卒 1963年 同大学大学院修士課程卒 1964年 朝日新聞大阪本社入社 広告部に配属 1970年 アドマンとして、大阪千里万博で各国パビリオンの紹介 新聞広告読者調査、広告倫理・審査部門で活躍 主要著書 1979年 「近代日本の新聞広告と経営」朝日新聞社刊行(山本武利、津金沢総広、有山輝雄との共著) 1985年 「龍馬復活:自由民権家坂本直寛の生涯」朝日新聞社刊行 元一橋大学総長都留重人氏が1985 年度刊行の代表作三作の内の一冊に推薦 1991年 「我が生涯の新島襄」森中章光日記」不二出版 全国図書館協会推薦図書 2012年 「元陸軍中将遠藤三郎の肖像」すずさわ書店刊行 2017年 「 将軍遠藤三郎とアジア太平洋戦争」ゆまに書房刊行角川書店; 角川源義賞候補作品 全国図書館協会推薦図書
- ISBN:
- 9784867261477