
今回一冊の書籍として再編された3本のコラムは、もともとは私が他の臨床心理士仲間や、「離婚と子ども」の問題に直面する当事者らを巻き込んで、インターネットを活用した面会交流支援を試行的に構築する計画を立て、関係者との打ち合わせを通じて徐々にそれを形にしていく過程の中で、そうした支援が必要とされる社会事情や問題の実態について、ユーザー層を意識してわかり易く解説し、支援の有用性をアピールすることを企図して書かれたものです。 ただし、それだけではなく、当初から私の中では、後にこれら3本のコラムを一冊のまとまりを持った書物として形にしようとの思いも有りましたので、執筆の過程ではそのことも意識して臨みました。 今回、全体を「私たちの周りの『離婚と子ども』〜その問題の正体を考える」と名付けたのは、本書が、単に特定支援の有用性をアピールするにとどまらず、我々が日頃から身近に見聞きする「離婚と子ども」の、その本来の姿かたちを、例え一端であっても、より鮮明に立ち現わせることを企図したからです。 最初のコラムが書かれてから、すでに2年半が経過しており、取り巻く社会情勢には多少の変化も見られますので、部分的に加筆修正を加えました。とはいえ、基本的な問題状況は相変わらずの様相を呈していると言って良いと思います。 思い返せば、これら3本のコラムを書いた時期とは、私にとっては、当初から頭ではある程度整理できていた問題の全体像が、個人的な経験も積む中で、生身の実感を持って意識されるようになってきた頃だったと感じています。 今回まとめられたコラムが、私たちの身近に存在する「親子の引き離し問題」という特殊な問題状況について、具体的な姿かたちを提供することに役立ち、それを足掛かりにさらなる問題の掘り起こし、そして解決に向けた具体的動きが湧きあがっていくことを、切に願っています。
- ISBN:
- 9784815009823