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彼にして欲しかったこと全部、俺が代わりにしてあげる 世話焼きな友達の元カレ×悲観的なアラサー女子 【あらすじ】 「見返してやろうとは思わない?」。ブライダルプランナーの幸は、体の関係はあるのに恋人未満だった高校の同級生・夏樹と、自分の同僚の琴音との披露宴の担当プランナーに指名される。披露宴は無事終えたものの、幸は夏樹への想いを引きずったまま。そんな幸の前に、琴音が結婚したことを知らない琴音の元カレ、恵介が現れる。第13回らぶドロップス恋愛小説コンテスト受賞作。 【本文】P42〜45「1 選ばれなかった女と知らされなかった男」より  こんなキスをしたのはいつ以来だろう?  なんか気持ちいい……。ダメだ……頭がボーッとする……。 「俺は幸さんとこういうことしたいって思ってんの。わかる?」 「……ダメだよ……」 「なんで? 彼じゃないから? 今でもまだ彼が好き?」  私がうなずくと、富永さんはネクタイを外した。 「だったら俺を彼だと思えばいいよ。身代わりくらい、いくらでもしてやる」  そう言って富永さんは、外したネクタイで私の目元を覆った。目隠しをされて視界を遮られると、不安で胸が押し潰されそうになる。 「ちょっと待って……身代わりって……」 「彼を思い浮かべながら全身で思いっきり感じて。彼にして欲しかったこと全部、俺が代わりにしてあげる」  耳元や首筋にも何度もキスをされ、服の上から体のラインをなぞられると、肩が小刻みに震えた。  何これ……? お酒の勢いとかその場の雰囲気だけで、彼氏でもない人と、なんでこんなことになるわけ?  私としたいって……なんで?  酔った頭では理解できないこの状況で、私は富永さんにされるがままになっている。こんなのおかしいと思うのに、その手で触れられたところが熱くなって、体の奥が疼いた。 「幸……可愛いよ」  忘れかけていた甘い疼きに無意識に声が漏れそうになり、恥ずかしくて慌てて口元を押さえた。 「声、我慢しないで。もっと聞かせて」  彼はその手を取って口づける。焦らすばかりで素肌には触れない。じれったくてもどかしくて、堪えきれず彼の首の後ろに腕を回した。 「幸はどうしたい?」  どうしたいのかと聞かれても、恥ずかしくて言葉が出てこない。 「どうしてもイヤならやめるけど」 「イヤ……じゃない……」  頭で考えるより早く、私は無意識にそう答えていた。 「だったらどうして欲しいのか、ちゃんと素直に言ってごらん。幸の言う通りにしてあげる」  ちゃんと素直に言って……って……。恥ずかしい……。  さっきまで優しかったのに、なんで急にこんなに意地悪なんだろう? 「言わないならやめるよ?」  耳元で囁ささやかれて、私の奥でずっと眠っていた女の部分が目を覚ました。 「やだ……やめないで……」  恥ずかしさを堪えて小さな声で呟くと、彼は私の口元に耳を近付けた。 「ん……? どうして欲しいの?」 「いっぱい……キス……して、欲しい……」

Price¥924
出版情報竹書房櫻井 音衣/千影 透子

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