
夫婦の関係性は、妻の就業状況によっていかに異なるのか。断続的な就業経験(正規、非正規、パートタイムなど)をもつ妻の就業状況に時間軸を取り入れ、権力関係変容のプロセスを分析する。本書は、「近代家族」に内在する矛盾を問い直し、非対称的なジェンダー・アレンジメント生成の過程を明確にする。なにより、「夫婦の危機」の発生を読み解くものである。 序 章 いま夫婦に何が起こっているのか 1 「働くこと」と夫婦 2 「働くこと」をめぐる夫婦間相互行為を問うことの意義 3 本書の構成 第1章 夫婦関係研究の到達点と課題 1 日本の「近代家族」研究に残された課題 2 夫婦関係研究における問題設定の偏り 第2章 共働き世帯の増加と夫婦関係分析の視点 1 1990年代以降の既婚女性の就労と夫婦関係の変化 2 現代の夫婦関係をとらえる分析視点 3 使用するデータ 第3章 既婚女性の「経済的依存」の実態 1 妻の経済的自立への注目 2 海外における「経済的依存」研究 3 日本における既婚女性の経済的地位の把握 4 日本における「経済的依存」状況把握の試み 5 夫婦関係を「経済的依存」からとらえる意義 第4章 「働くこと」と夫婦関係に関する意識 1 夫婦関係と妻の経済的自立 2 妻が「働くこと」と対等な夫婦関係についての知見 3 首都圏在住女性の意識 4 「働くこと」と対等な夫婦関係を妻はどう見ているのか 5 自身の就業経験による夫婦の対等観の違い 第5章 平等志向夫婦における妻の労働市場からの退出 1 なぜ妻が離職するのか 2 23組の夫婦への聞き取り調査 3 3つの次元の権力作用とその規定要因 4 残余部分でなされる妻の「自由な選択」 第6章 妻の離職と夫婦関係の変容 1 妻たちのライフストーリー 2 妻から見た夫婦関係の激変 3 妻の権力経験と夫の無自覚 第7章 妻の再就職と夫婦関係の再編 1 脱専業主婦への挑戦 2 再就職が夫婦関係にもたらしたもの 3 妻の再就職が意味するもの 終 章 ジェンダー・アレンジメント変革への内なる挑戦 1 縦断的アプローチから見えてきた夫婦の権力関係 2 つくられた妻の「自由な選択」 3 「働くこと」の意味 4 1990年代以降の夫婦が直面する課題 引用文献 あとがき 人名・事項索引
- ISBN:
- 9784623078707