
本書は、一人ひとりのセラピストがクライエントとの心のいとなみを見直すことを通じて心理療法の本質を問い直すことを目的とする。第一章は、クライエントとセラピストの関係における主体をめぐる論考、第二章は主体を捉えようとするセラピストの視点や姿勢にまつわる論考、第三章は心理療法的主体の表現へのアプローチにまつわる論考、そして第四章は捉えがたき主体へのアプローチについての事例を通じた論考が展開されている。 はじめに 序章 第一章 心理療法における主体 心理療法における“私”性と“固有”性ーーあるいは河合隼雄の「“私”の心理学」 ユングの自我体験 主体生成プロセスをまなざす観点呈示の試みーー「垂直性をめぐる動き」「水平性をめぐる動き」という観点 “異”なるものとの出会いとしての臨床性 身体言語的トポスとしての心理臨床空間 心理療法における居場所 ■ コラム■ デジャヴュ体験が与える「守り」の観点 ■ コラム■ 自殺念慮の心理的意味 第二章 セラピストのまなざし 心理臨床における見立てーー出会いと主体の生成をめぐって 逆転移概念の批判的検討ーー治療者の省察のために 心理療法における治療者の熱意の意義ーーナルシシズムを超えて クライエントにとっての事例研究 事例報告の夢 ■ コラム■ 保護者面接の軸とカウンセラーの親経験 第三章 表現における「主体」と「関係」 プレイセラピーにおける解釈と洞察ーー潜在的な関係性知識に向けて 「私」のリズムと表現ーー瞬間の関係性としての前言語的表現 バウムという投影法ーー共感するバウム 風景構成法における自己像の描画にみる「定位」--風景の「見え」との関連から 絵を見ることにおける触覚性ーースクィグルを題材に 「チャムシップ関係」という視点からみた心理療法 ■コラム■ 心理療法再考ーー『気』の観点から ■コラム■ 「私」が「私」になる過程としての原光景について 第四章 事例研究 「私」の凝固と融解ーークライエントとセラピストの交錯するところ 統合失調症と診断された一青年との面接過程 精神病を抱えるクライエントへの回復期における箱庭療法の意味ーー幻想から日常への橋渡しの働き 統合失調症学生と共に過ごした時間ーー風景構成法の変遷から プレイセラピーにおける自己体験のあり方の変化についてーー遊びの勝ち負けへの関わり方をめぐって 子どもとともにつくる治療の場、そして治療の場ーー情緒障害児短期治療施設の実践 器質性精神障害をかかえる女性との出会いーー心的次元における生と存在と出会いへの問い直し ■コラム■ 先天性心疾患術後患児と養育者に課せられているものをめぐって ■ コラム■ 精神科デイケアという場所(トポス) おわりに
- ISBN:
- 9784422113708