
周縁にとって、近代とは、発展とは何だったのか? 本国は周縁を使い捨てにし、そこで核実験や放射性廃棄物の投棄を行う。それを可能にした力の装置は、ヨーロッパとポリネシアが出会ってから現在に至るまで働いている。そして世界の至るところで、核開発の罠は張り巡らされている。ベンヤミン、アーレント、ヴェイユ、レヴィ=ストロースらと、現地で日常を生きる人々の思想を辿りながら、パリから遠く離れた海外領土の東ポリネシアで、核実験を可能にした入れ子状の権力の仕掛けを、そして人々の気づきを、圧巻のスケールで描き出す民族誌。 プロローグ I 太平洋 1 時間を再び与えられる 2 ポリネシアへどう向かう? 3 太平洋の過去へ 4 日本の南洋 5 その大戦略には暗黒があった 6 権威を欲望する権力者 II コンタクト 1 ポリネシアへ至る道 2 愛は下部構造、星は下部構造 3 主権の初めに暴力があった 4 銃を向けると彼らは笑った 5 ウォリスのペナント 6 オロ神が死んだ III 神の死と主権の秘密 1 生者を殺して潜勢力を産む 2 だから核実験がつづいた 3 主権権力の美しさ 4 魅力的な男のイメージ 5 二つの国旗が交差する墓 6 原子力マシンは国家を動かす IV 痕跡たちの間で 1 大転換は核実験の前に始まった 2 至高性の例外 3 トタンの家と二本マストのヨット 4 軍隊には無限の機会があります 5 それはどう肯定的なのか? 6 偉大を超えるローズの軽薄 V 遠くから島を振り返る 1 距離を保つ 2 沈黙させる賠償金はいらない 3 私が知らないパリ 4 王のように振る舞う泥棒のルール 5 核実験場のリゾート 6 素晴らしさを媒介する巨大な仕掛け VI 無知の発展について 1 命令されたことをやった 2 自己を保持する 3 フランス兵も無知だった 4 診療ノートをもっているようですね 5 制度の外で生を分け合うこと 6 ローマに送られたポリネシアの神 VII 人間と社会と自然 1 成り行きを顧みない二つの合理性 2 その雲の下で眠るしかなかったのです エピローグ 〈付記〉この本に登場する哲学者たちと人類学者たちについて あとがき
- ISBN:
- 9784393334041